新たな可能性
- 2015/5/25
- 越後奥寂庵
昨日、ほくほく線松代駅近くにオープンした「Cafe 澁い」に行ってきました。このCafeはもともと旅館だった古民家が再生されたものです。古民家再生を手がけたのは、古民家再生の世界では有名なドイツ人建築デザイナー、カール・ベンクス氏です。カール氏は、越後奥寂庵からクルマで20分のところに自宅を構えていることから、密かに興味を持っていた方です。ドイツ人の職人気質を持ってして「日本の伝統建築は世界最高だ」と言わしめ、彼の自宅のある場所を「世界で一番いいところ」と繰り返し述べてきた方です。彼は同時にこうも述べています。「みんな、自分の足もとにある貴重な宝石に気づいていない。その宝石は磨けば必ずすばらしい光を放つのに」と。
7年前に越後で、庄屋だった立派な造りの古民家を見つけ、不動産屋に問い合わせたことがあります。内見に伺おうと話が進んだ時に、不動産屋から待ったが掛かりました。「大変申し訳ありませんが、オーナーが息子さんに代わり、取り壊すことになりました。残念ながら息子さんはどれだけ凄い建物か、分かっていらっしゃいません」。
カール氏は、朽ちていく古民家を観て「私は世界最高の建築を未来に残し、同時に私が暮らすこの地域を元気にしたいと思ってきた」そうです。「仕事がないから若い人たちは街に出て行ってしまう」と嘆く地元の方々が居る一方で、地元の方々が価値を置かない古民家に「世界最高の建築」という価値を与え、未来に残すことに情熱を向けて、越後の田舎を活性化しているドイツ人がいる。
私は越後の良さを発信してきて、感覚として外国人の方が、この美しさに反応するような感覚を持っています。これは差別意識からではなく、反応を客観視したことでです。地元の方だけでなく、日本人全体が自分達が持っているものの美質に気づきにくいのかもしれない、と思うようになっています。
私は心身と霊性を扱う身ですから、意識と無意識、自分と環境との境界がいい意味で曖昧で、内奥に繋がりやすい日本人の特性がまだ息づいている越後の地の良さを、これからも発信し、そのようなことに魅せられる方々にお出で頂きたいという気持ちがさらに強まりました。
生物多様性、持続可能性、自然共生社会の重要性を現す時に、「里山(Satoyama)」という名詞は、国際化しました。それは、消費型ではない循環型のシステムが日本のみならず、世界的にも失われてきている危機感からでしょう。長年自然と付き合って出来上がってきた里山というシステムを、これからの<いのち>ために未来に残していく必要があるのではないでしょうか。そのためのヒントを、このCafeから戴きました。
隣りのピンク色の漆喰の家もカール氏による再生古民家です。他にもカール氏が手がけた古民家があり、カール氏は、ここをそのような家の街にしたいそうです。スタッフの方と立ち話をさせて頂きましたが、このCafeでも、今後、イベントをしていくかもしれません。スタッフの方に、私の職業とともに家の構造と精神構造の関係性について少し話をしたところ、「カール氏とのトークショーもいいですね」と言われました。実現するにはハードルはあるとは思いますが、そのようなアイディアを戴けただけでも、いろいろと夢が広がります。