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ハーモニーのビート

~ がん患者とのドラミング ~

(The Beat of Harmony:Drumming with Oncology Patients)

クリスティーン・スティーブンス

ハーモニー(調和)とは、二つの異なった音色が素敵に混じり合い、心地の良い一つの音になることです。

ハーモニーはまた、音楽的な定義を越えて、グループが一緒に音楽を創り出す際に生じる共同体の感覚、一体感のなかにも存在します。土曜日の朝、カリフォルニア州サンタモニカで、二つに分かれたグループが一緒になりました。それは唯一無二で、パワフルで、衝撃的な体験のために一緒になったのです。一つのグループは、レモ・パーカッションセンター(REMO Percussion Center)に属する12名のボランティアドラマーの集まりでした。彼らは、ウェルネス・コミュニティ(The Wellness Community)に滞在するがん患者のグループに、ドラミングの質である喜びとスピリットをもたらしたのです。この二つのグループが一緒になり、楽しく即興的な音楽が創り出されたことによって、健康的な和音が生まれました。

サークルの中心に、果物の形をしたシェイカーが入ったバスケットを置いて始めました。そのことにより、見知らぬ人たちと出会い、不安を感じてシーンとしていたグループから、クスクス笑いがもれました。少しずつ笑う人が増えていき、それぞれがシェイカーを選び取って、演奏し始めました。しかしそれは、演奏する以上に深まっていったのです。参加者たちから、自分自身を解き放つこと、自分が完璧ではないことに許しを与えることの意味が伝わってきたのです。それは私たち全員にとって重要なレッスンでした。

一連のリズム活動により、参加者にとって音楽を創り出すプロセスが気楽なものになるにつれて、グループがより居心地の良いものとなり、グループ全体がリラックスしていきました。1時間が経つと、彼らから比べようもない表現が瞬間瞬間に生まれ、ハートからの音楽が奏でられていました。

セッションは、誘導瞑想と呼ばれる体験で最後を迎えました。これは参加者に目を閉じて貰い、誘導によって浮かぶイメージをドラミングによって表現していくものです。この瞑想的な行為としてのドラミングは、批判的なお喋りと心配症の思考を散らしてくれました。このドラムサークル後、ひとりの参加者が、「がんのことを忘れることができた初めての体験だった。」とコメントしてくれました。彼女は、気持ちの良いことを再び感じ始めたのです。

母親であり、教師であり、がん患者であり、ドラマーの初心者であるニッキー・フィスケ(Nikki Fiske)の言葉です。

「リズムに集中し、今この瞬間に完璧に存在することは、とてもリラックスするし、とても自由を感じたわ。判断なし、プレッシャーなしなんて想像できる? 唯一無二の調和した音を創り出すまで、それぞれが自分自身の内側にあるリズムを叩き、グループとして一緒に取り組んだのよ。そこにはたくさんの笑いがあり、分かち合いがあり、お互いへの賞賛があったわ。2時間のドラミングの後にサークルから離れたとき、私にはスピリットとハート、そして沸き上がる勇気があったのよ!」

ドラミングにはまた、重要な生物学上の効果もあります。ペンシルベニア州メッドヴィルにあるマインドボディ・ウェルネスセンターで行われた研究によると、「グループ・エンパワーメント・ドラミング(訳注:ヘルスリズムスのことです)」と名付けられた、ある順番に従って進められる1時間のグループ・ドラミングでは、がん細胞とウィルスに感染した細胞を探し出して破壊する、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)と呼ばれる白血球の血中濃度に、顕著な増加がみられたのです。(Bittman et al. Alternative Therapy, January, 2001)

ワシントンD.C.にあるマインド・ボディ・センターのジェームス・ゴードン医師(James Gordon, MD)は、「もしがん患者が、このグループ・ドラミングに興味を持つ場合は、腫瘍医はグループ・ドラミングを開催すべきです。ドラミングは、人々をリラックス状態に導くことができるのです。ドラミングは、1,000年前からヒーリングのテクニックとして使われているのですから、もちろん今もそうでしょう?」(MAMM Magazine, July/August, 2001)

REMOのボランティア・ドラマー達は、彼らが与えるよりも体験から得ることの方が大きいことを認めています。プロのドラマーであるサム・ケシュテンホルツ(Sam Kestenholts)は、こう述べています。「一緒に演奏をしているグループで、参加者の沸き上がるスピリットを観て感じることは、他にはない体験です。それは、見知らぬ者でいっぱいの部屋が、一つの共同体になるようなものなのです。」

(文責:贄川治樹)

この論文は、クリスティーン・スティーブンス女史の承諾のもと、贄川が翻訳したものです。クリスティ-ン女史に感謝いたします。